巨大特撮にとってアイレベルとアングルの重要性

雑感ノート

巨大特撮にとってアイレベルとアングルの重要性

  • アイレベルについて
  • 巨大特撮にとってのアイレベルの役割

アイレベルとは

アイレベルとは文字通り「目の高さ」の事です。

目の高さと言っても色々ありますが、アニメーションや漫画などで使われる時はことカメラの位置を指します。

この考え方は普通のドラマを撮っている時はさほど気になりませんが。こと特撮、特に「ミニチュア特撮」となると話は別です。

等身大の物を巨大なものとして撮るという時にこのアイレベルはとても重要になってきます。

特にカメラがどこにあるのか?誰の目線で撮っているのかという事を常に意識しておかないと、ついつい怪獣の目線にカメラが上がってしまう事があるのです。

そうすると、舞台上で撮っていると違和感が無くても、よくよく考えてみるととてつもなく高い場所にカメラがあるという事になりかねません。

つまり「神の目線」に入ってしまうのです。

これはあるカメラマンの方がおっしゃっていたことですが、人は映像が見たことの無い高さや動きをするとたちまち現実感を無くしてしまい「これは作られたものだ」と認識してしまうのだそうです。

確かに、平成のゴジラシリーズを見るとよくゴジラを俯瞰に見るカットが多数あります。

確かに街の作り込みは素晴らしくステージを広く見る事が出来ますが、どうしてもミニチュアである感覚がぬぐえないカットになってしまいます。

それに肝心のゴジラの巨大感が削がれている印象もあります。

それに比べて平成ガメラシリーズやシンゴジラなどは劇中の多くがローアングルに徹し、アイレベルが街にいる人の高さになっています。

もし高くなったとしてもそれは高台からの見た目やヘリコプターからの見た目など、なんとなく現実的にあるアイレベルが設定されているため巨大感や現実感が演出されているように思えます。

このように考えると巨大特撮にとってアイレベルとはとても重要な事だと考えられるのです。

しかし、絵コンテを考える際にこれが難しい。

なぜならアイレベルを下げるというのは意識していないとついつい上がってきてしまうからです。

それはドラマを撮っている監督などは分かると思いますが、顔を正面に撮りたくなるとついつい怪獣やウルトラマンの目線までカメラが上がってしまうのです。

それは物語を進行する上でどうしても顔をあおらずにストレートでとらえたくなるからであり仕方のない事でもあります。

例えば会話などがそうです。

宇宙人とウルトラマンが会話するシーンなどアイレベルをウルトラマンの顔の位置まで上げずにあおって撮ると、どうしても客観的になり感情移入しにくくなるのも事実です。

そのため「ここはあおって撮るべきなのか?」それとも「アイレベルを上げるべきなのか?」とコンテ作業をしているとかなり悩む事でもあるのです。

アイレベルから解放される「飛翔」

このように巨大特撮では常にアイレベルを意識したアングルを模索しなければならないのですが、その呪縛から解放される瞬間があります。

それが「飛翔」です。

物体が飛ぶとそれまでの巨大感を失います。

それは空には対象物が無いからです。

そのため怪獣やウルトラマンが飛ぶとなるとそれに付いて行くカメラも重力やアイレベルから解放されます。

縦横無尽に飛ぶことが出来るのです。

この地上の重厚感と飛び立った後の爽快感を見事に体現したのが平成ガメラシリーズや平成の映画「ULTRAMAN」と私は記憶しています。

これらの作品は地上での重厚な戦いの末、飛び立った後の空中戦の爽快感、飛翔感は堪らないものがあります。

これは何も飛翔するものが巨大な怪獣でなくても可能です。

例えば戦闘機。

怪獣に対抗するための戦闘機と共にカメラもついていくと考えればアイレベルは縦横無尽に動かす事が出来ます。

つまりアイレベルの設定にはリアリティのある設定が必要という事なのです。

地上であれ、空中であれ、そこにカメラが存在するというリアリティがあるかという事が巨大なものをよりリアルに描くことで最も重要になってくるのです。

アイレベルを学ぶにはどうすればいいか

巨大特撮でアイレベルが重要という事はご理解いただけたと思いますが。ではどうすればそれを学ぶ事が出来るのでしょうか。

もちろん巨大特撮映画を多く見るという事は大事ですが、もっと分かりやすく専門的に扱っているのがアニメーションの世界です。

アニメーションは空間を描くためのアイレベルやパースの勉強が徹底しています。

次に参考となる動画があるのでそれを記しておきます。

hide channel「誰でもわかるパース講座①アイレベルって何?」

YouTube

こちらの動画は実際のアニメーターの方がパースについてわかりやすく解説している動画です。

詳しく知るには絵画などの書籍を読み込むことが良いとは思いますが、動画で分かりやすく説明しているのでとても助かります。

また怪獣独特の巨大感をパースで勉強したい場合はこちらがおすすめです。

開田裕治 怪獣イラストテクニック (玄光社MOOK) 

こちらは怪獣絵師・開田裕治氏が巨大な怪獣の書き方から巨大感に見せるパース技法を分かりやすく説明しています。

こういうものを読み自分なりに絵コンテや、イメージボードを描いてみるとアイレベルやパースのイメージがつかめてくると思います。

巨大特撮はアイレベルとパースが命」と言っても過言ではありません。

ぜひ挑戦してみてください。

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