みなさんはイメージボードやコンセプトアートというものをご存じでしょうか?
イメージボードやコンセプトアートは簡単に言うと監督のヴィジュアルを絵にする工程ですが
特撮においてこのイメージボードやコンセプトアートが重要な役割を果たしています。
なぜイメージボードやコンセプトアートが重要なのでしょうか。
結論から言うと特撮はゼロイチの世界であり監督のイメージによって作品が180度変わってしまう事もあるからです。
分かりやすい例でいうと特撮の名作「エイリアンシリーズ」です。
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あの作品はシリーズ4作品(旧シリーズ)において全て監督が代わっており、そのたびに作品のテイスト、世界観がガラッと変わった珍しい作品でもあります。
なぜこのような事が起こるのか?
それにはこのイメージボードやコンセプトアートが重要な関わりを持っているからなのです。
今回はそのイメージボード・コンセプトアートに焦点を当ててその役割と作り方などを解説していきたいと思います。
是非最後までご覧ください。
- イメージボードとコンセプトアートの違い
- 特撮映画におけるイメージボードの重要性
- イメージボードの書き方
- イメージボードを重要視した監督「ジェームズ・キャメロン」
特撮映画におけるイメージボード・コンセプトアートの重要性
イメージボードとコンセプトアートの違い
そもそもイメージボードとコンセプトアートという言葉を上記で使っていましたが、厳密に言うと意味合いが少し違います。
イメージボードはイメージをデッサンしメモしておくものであって、よく監督が描いていたりします。監督がイメージボードを使って一部のスタッフにイメージを共有したりしますが、あくまでメモのような意味合いが強いです。
それに対してコンセプトアートは各部のスタッフに作品のイメージを伝えるために、より緻密に世界観の描写や、美術や造形のデザイン、キャラクターの衣装などを描いて共有します。
これをすることで各スタッフがその監督のイメージや世界観を共有できるようになるのです。
イメージボードよりも、コンセプトアートの方が各スタッフとのコンセンサスを取るために重要で、より詳しく描かなければならない場合多く、美術デザイナーやコンセプトアーティストと呼ばれるスタッフが専門的に描いている場合がほとんどです。
このコンセプトアートですが、特に特撮が絡むドラマや映画に多く使われており、特撮の絡まないドラマなどはコンセプトアートまでは作らず、監督によってはイメージボードを作っている場合もありますが、それすらない事がほとんどです。
ではなぜ特撮にとってはこのコンセプトアートやイメージボードが重要視されるのでしょうか?
特撮におけるイメージボードの重要性
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特撮にとってコンセプトアートやイメージボードが重要視されているのはなぜか、それは「ゼロイチの世界」だからです。
普通のドラマであればキャストがいて、ロケ地があって、衣装も有りものがあって(作る時もありますが)となかなかゼロから作り上げるという事はありません。
しかし、特撮が絡むとそうはいきません。
世界観から、キャラクター、小道具に関してもイチから生み出さなければならないのです。
特撮と同じくコンセプトアートが重要視されている業界があります、それが「アニメ」と「ゲーム」の業界です。
こちらは特撮以上にゼロから生み出される世界であり、元のイメージはありません。
そのため各スタッフ(イラストレーターやアニメーター、原画マン、背景、キャラクターデザイン、プログラマー)などにイメージや世界観をビジュアルで伝える必要があります。
そのためにコンセプトアートがとても重要になってくるのです。
特撮もアニメやゲーム同様、キャラクターや造形、美術、世界観に関して1から作らなければなりません。
最初にあるのはカラの舞台だけです。
ゼロから生み出さなければならないため監督のイメージが絵になっている事が特に重要なのです。
イメージボードの描き方
では次にコンセプトアートの元となる、監督の描くイメージボードの描き方をお伝えします。
イメージボードはキャラクターのイメージや世界観の伝わる背景、重要なシーンの1場面など1枚絵にして思い思いに描いていきます。
ここで重要なのは画コンテのように動きを連続して描いていく必要はありません。
思いついた瞬間を1枚絵に残しておけば大丈夫です。
その1枚絵を元に美術デザイナー等かコンセプトアートに落とし込んだり、画コンテマンが画コンテに描き起こしていきます。
また重要と思われるシーンは何枚もイメージボードを描く場合もあります。
何より監督が思いついたアイデアを絵に残しておく事が重要で、後にその絵を精査し採用できるものは使っていきます。
もちろん絵にした段階で没になる事もあります。
もったいない気もしますが、それが完成への道筋になる事なので躊躇なく没にしましょう。
また没になったイメージボードでも他のアイデアや他の作品で参考になる事もあるので、必ず保管しておきましょう。
イメージボードが出来上がったらそれを美術デザイナーやコンセプトアーティスと共有しコンセプトアートにしていったり、美術や造形デザインに落とし込んだりしていきます。
また絵コンテマンと共有する事で絵コンテに反映する事も出来ます。
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イメージボードは監督がメモのようにアイデアを絵に書き留めていくものですが、美術の設計や衣装デザインなど細かく描くコンセプトアートを自ら手掛けている監督もいます。
それが前述した「エイリアン2」や「ターミネーター」等メガヒット作を世に送り出したジェームズ・キャメロンです。
コンセプトアートを自ら手掛ける巨匠「ジェームズ・キャメロン」
1954年8月16日、カナダのオンタリオ州カプスケーシングで生まれたキャメロン。
1971年、家族と共にカリフォルニアへ移住し、フラートン大学で物理学を学び始めました。しかし、彼の興味は次第に英文学へと移り、最終的には大学を中退。
映画制作の世界に足を踏み入れたキャメロンのキャリアは、1980年の映画『バトル・ビヨンド・ザ・スターズ』のミニチュアセット製作からスタートしました。
B級映画の帝王ロジャー・コーマンのスタジオに入り、「宇宙の7人」(80)の美術監督や「ギャラクシー・オブ・テラー 恐怖の惑星」(81)の第2班監督などを務める。
81年「殺人魚フライングキラー」で映画監督、脚本家としてデビュー。
そして、1984年、彼の名を一躍有名にしたのが『ターミネーター』です。
低予算ながらも革新的なストーリーと視覚効果で、大きな成功を収めました。
主な作品
- 『ターミネーター』(1984年)
- 『エイリアン2』(1986年): リドリー・スコットの『エイリアン』の続編で、よりアクション要素を強化し、成功を収めました。
- 『アビス』(1989年)
- 『ターミネーター2』(1991年): 前作の続編で、革新的な特殊効果が話題となり、興行的にも成功しました。
- 『トゥルーライズ』(1994年)
- 『タイタニック』(1997年): 興行収入で歴代1位を記録し、アカデミー賞を11部門で受賞。
- 『アバター』(2009年): 3D技術を駆使したSF映画で、再び興行収入の記録を更新しました。
彼は美術大学で培った技術を活かし自ら緻密なコンセプトアートを描く事で「エイリアン2」の世界観を完全に自分のものにしました。
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作中に登場するメカニックから背景、クイーンに至るまでキャメロンのこだわりが感じられます。
また、コンセプトアートを監督自ら描くことでスタッフも迷うことなく制作する事が出来るので作品のブレが少なくなり、制作期間も短縮する事ができます。
キャメロンの緻密なコンセプトアートは書籍でも見ることができますのでぜひご覧ください。
このように、イメージボードやコンセプトアートは特撮作品においてとても重要な役割を持っています。
是非そういった目線でも作品に触れてみるとまた新たな発見があるかもしれませんね。
ではまた。
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