皆さんこんにちは、今回は怪獣のアクションについて書いていきたいと思います。
プロフィールにある通り僕は10年以上、円谷プロダクションのウルトラマンTVシリーズでミニチュア使った巨大特撮ドラマの現場を見てきました。
そこではウルトラマンと怪獣が常に戦っているんですが、怪獣を怪獣らしく見せるにはそれなりの工夫が必要で、スーツアクターは日々その技に磨をかけています。
今回はその要素の一部をご紹介したいと思います。
怪獣アクターに焦点を当て、いかに怪獣らしさを表現するのか、巨大感を持たせた格闘はどう工夫して撮影しているのかをご紹介したいと思います。
- 怪獣を演じる上でのポイント
- 巨大感を見せる芝居とは
- 対人とは異なる「対怪獣格闘」
巨大特撮で考えるの怪獣のアクションシーン
クセが生命を与える
怪獣は生き物であり、私達の前に出現する前から生きていた訳ですからその生存環境で身についたクセが存在します。
例えば獲物を捕らえるために爪を研ぐ仕草だったり、威嚇をする際に敵より大きく見えるように体を震わせたりします。
そんな生存するために身に付いたクセを表現することで怪獣のバックボーンを補強し怪獣らしさを増します。
その為にアクターは怪獣のデザインの元になったり、類似した動物や昆虫、植物などを観察し想像するのです。
この「観察」し「想像」することこそが、人間ではない物を表現しなければならない怪獣アクターの特異ななところでもあります。
上手いアクターはこの観察力に独自の表現を加えてとても魅力的な表現をしてくれます。
時には演出する監督からも要望があります、しかしその際もアクターの考えていたプランとすり合わせて最も最適な演技プランを導き出します。
![](https://www.cinemagarage.jp/wp-content/uploads/2024/05/actor1.png)
ハイスピードと芝居で見せる巨大感
怪獣のもう一つの特徴として「巨大」であると言う事です。
普段は50m級の大きさですが(これでもかなり大きいが)更に200〜300m級の超巨大な怪獣もいます。
そんな大きな怪獣は普通の撮影と違いカメラのコマ数を上げます。
いわゆるハイスピード撮影ですね、被写体の動きをゆっくりさせることで巨大感を表現します。
「ハイスピード撮影を使った巨大感の表現」についてはこちらでも記事にしているのでご覧ください☟
コマを上げるということは必然的に動きがゆっくりになりますから、その出来上がった映像を想像しながら演技をしなければなりません。
当然24コマと48コマでは動き方が違いますし爆発を絡めたら120コマというとても多いコマ数にもなります。
アクターはコマ数が変わればその度に自分の動きの速さを変えていて、例えば36コマを普通の芝居の基準と考え、48コマの動きは少し早めに、120コマでは思いっきり素早く動くなど、こまめに変えています。
そうする事により、ただスローだからゆっくり見えるのではなく「巨大だからゆっくり見える」と視聴者に錯覚させる事ができるのです。
「格闘」も人間とは違う感覚で撮る
ウルトラマンの醍醐味といえば巨大な怪獣とウルトラマンとの格闘ですが、ここにも普通のアクションではわからない工夫があります。
普通の人間同士がやるような格闘をしてしまうと、「怪獣の中の人間が透けて見えてしまう感覚」になり興醒めしてしまうことがあります。
アクターはあくまで「怪獣」、あくまで「巨大」である事を意識しなくてはいけません。
前述したように怪獣であれ生存環境で身に付いたクセがあり、それは戦闘スタイルにも現れます。
ただ単にパンチやキックをする事はできません。
時に引っ掻き、時に噛みつき、時に頭突きし( たまにキックもしますが)
時に愛嬌のある動きも交えて戦います。
その怪獣の特徴を観察し想像し、その怪獣が外敵に対してどう行動するかを考えるのです。
そうする事で、「人対人」ではなく「巨人対怪獣」の戦いを実感させることが出来るのです。
また「巨大」というのも格闘を悩ませます。
普通のアクションではとにかく早く動けば何かと誤魔化せたりします。
そのためにアクションシーンではよく22コマと呼ばれる早回しの撮影方法が使われます。
22コマで撮られた被写体は動きが速くなり、キビキビとキレがよく見えます。
アクション未経験の俳優や力の弱い女性などがアクションする時でも22コマでカットを割っていけば以外に見栄えよく見せる事が出来ます。
ところが巨大特撮の格闘はそうはいきません、なぜなら前述したように「巨大感」のためにコマを上げなければいけないからです。
逆に着ぐるみが早く動けば動くほど巨大感が損なわれてしまいます。
![](https://www.cinemagarage.jp/wp-content/uploads/2024/05/actor2.jpg)
しかし、長めの格闘をそのまま36コマや48コマのハイスピードで撮り続けても間が持たず、飽きてしまいまし、動きを少しでも間違えるとけっこうバレます。これが難しい。
そのため巨大特撮の格闘を撮る時は極力カット内の手数を減らし一発一発の重みを表現するためにいろいろな工夫がされています。
例えばこまめにカット割りを変えたり、2カメにしてアングル違いを狙ったり、土砂上げや火薬等を使用して効果を足したり、合成で光線を入れたり…etc
この「テンポ」と「巨大感」を両立させるのがとても悩ましく、現場では監督たちが常に何コマにするか悩みながら毎カット撮影しています。
坂本監督のように気にせず22コマを使う監督もいるので演出次第なところもありますね~(*´ω`*)
いかがだったでしょうか、今回は巨大特撮における怪獣のアクションについてご紹介してきました。
怪獣によって、よ〜く見るとその怪獣特有の動きをアクターさんがとても工夫して表現しているので、ぜひしっかり見て頂けると嬉しいです😀
このブログでは特撮現場の様々な事を記事にしているのでぜひ他の記事もご覧ください!
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