特撮の業界人から見た「ゴジラ-1.0」のここが凄い⁉

雑感ノート

11月3日に公開された山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」みなさんはもうご覧になりましたか?

私は公開してすぐに撮休を狙って観に行きました。

なんせ特撮業界で仕事をしていれば必ずこの話題になりますし、現場に行けばネタバレのオンパレードだからです。

しかし、この映画に関して言えば「観て無い方が悪い」と言われるのは当然のことで、それこそ特撮業界では必須科目のようなレジェンド的シリーズです。

そんなこんなで「シン・ゴジラ」から7年の月日を経て久々の日本産ゴジラ映画です。

今回は特撮の業界で長年仕事をしてきた身としてここが凄かったというところを一般の方とは違った業界人の視点で紹介したいと思います。

巷で盛んにされているゴジラ映画考察とはちょっと違った目線でお話するので是非最後までご覧ください。

業界人から見た「ゴジラ-1.0」のここが凄い⁉

ここが凄い⁉①「海」まるで水棲生物のような動きが凄い⁉

まず驚かされたのはゴジラ-1.0でもよくトピックスとしてあげられるあの海のシーンです。

海でゴジラと遭遇した四郎たちがゴジラに追われながら機雷を投下していくシーンですが、このゴジラの動きと海とのマッチングがとてつもなく見事。

「ゴジラ-1.0」©2023 TOHO CO.,LTD.

特に水の合成というのはとても難しく、合成の物体と水が接触した際の合成部分の馴染みを水しぶきでごまかすしか方法はないのですが、その物理シュミレーションがとても馴染んでいてまるで本物が海を進行しているかのような水しぶきでした。

これはパシフィック・リムなどのハリウッド映画でも海で巨大戦をしている映画がありますが、その技術に匹敵する映像です。

しかも役者さんは実際の洋上での撮影であったこともあり、実写と合成部分のマッチングがかなりのものでした。

またゴジラの動きに関しても凄かった。

7年前のシン・ゴジラでは上陸前の一部分でしか泳いでいる状態が無く、河川ではほぼ歩いている状態でした。

ここまでしっかりゴジラが泳いでいるシーンは日本映画史でも初めてであり、そのヌルヌルした動きはまるで水棲生物を思わせる動きでとてもリアルです。

これはCG骨格で何度もシミュレーションして動きをつけていると思いますが、この自然な動きにするのはとても大変だと思います。

特に日本ではゴジラの動きに厳しく「生物であって生物でない」というなんとも神秘的な描写を求められるため、ゴジラ全体の動きに関してかなり慎重になったと思います。

そんな中でもこの海のシーンは迫ってくる恐怖感と躍動する生物感、更にはゴジラの神秘性も保った絶妙な動きだったと思います。

ここが凄い⁉②「陸」白昼でも誤魔化さないのは凄い⁉

巨大特撮で最も大変なのは白昼の合成です。

合成とは現実にCG物をなじませるために色んな事でごまかしています。

例えば煙や雨、夜などです。

それぐらい、まっさらな晴れの昼間に合成を入れると馴染ませるのに大変なのです。

その為、パシフィック・リムしかり、海外版ゴジラ然り、多くの巨大怪獣映画は夜に出現したり、雨を降らしたりと晴れの昼間に出たがりません。(まあ夜は夜で巨大感が出て映えるのですが)

そんな中、今回のゴジラ-1.0では白昼でしっかり動きます。しかもシン・ゴジラと違い躍動感をもってそれなりに動き、建物もバンバン壊します。

そのクオリティはハリウッド映画にも負けておらず、CGチーム「白組」の底力を感じますね。

業界内でも「白昼に真っ向勝負に出たな」という印象を持つ人が多く「誤魔化さずにあれだけ見せれるのは凄い」と評価する声が多いです。

ゴジラの動きも海の時ほどヌルヌル動くわけではなかったですが、電車を噛んだり、尻尾を振り回したりとシン・ゴジラ以上に躍動感があり、これは日本産ゴジラでも動きはギャレス・エドワーズ版ゴジラに近いのかなという印象です。

それぐらいハリウッド映画に匹敵するほどの完成度でした。

シン・ゴジラと対比するわけではありませんが、シン・ゴジラは日本が作ったゴジラ映画という印象に対して、ゴジラ-1.0はハリウッド映画を見たような感覚のゴジラ映画、まさに王道エンターテイメントといった感じです。

ここが凄い⁉③時代物にしたのは地味に凄い⁉

最後に今回の特徴でもある昭和の日本の街並みを舞台にしたことは地味に凄いところです。

これは初代ゴジラに年代を合わせたという事でしょうが、この何が凄いって現代の街並みを合成できないという事です。

当たり前ですが時代物となった場合、全てのカットで現代の建物を映す事が出来ません。

そのためロケであっても現代物を隠す合成をしなければならないですし、何より実景合成が出来ないのです。

ただ単純に実景を撮っても下絵にする事が出来ず、それを昔のものに作り替えなければなりません。

またそれを破壊しなければならないので通常の2倍.3倍の労力が必要です。

銀座の時計塔が象徴するように、昭和の建物は今の高層ビルと違ってディテールが複雑な建物が多いです。

これは西洋の建築様式を多く取り入れていた大正時代の名残ですが、それを再現するのは単純な立方体のビルを作るより数段時間がかかります。

その為、銀座の街並みをCGで再現したり、オープンロケで作り込みをし、更にそれを破壊するというのはかなり手間のかかった作業だったことでしょう。

そういう意味でも昭和の街並み、特に銀座のシーンは地味に凄いカットの宝庫なのです。

「ゴジラ-1.0」©2023 TOHO CO.,LTD.

いかがだったでしょうか。

特撮業界の人間ならではの視点で今回は「ゴジラ-1.0」を紹介してきました。

まだまだランキング上位に位置するゴジラ-1.0。この勢いで更に盛り上がって欲しいものですね。

それにこんなにヌルヌル動くゴジラを見たらVSシリーズも見て見たくなりますね。

個人的にはヌルヌル動くビオランテが出てくると嬉しいですが…

まだ見て無い方は是非一度ご覧になってはいかがでしょうか。

コメント